むち打ち損傷とは、簡単に言うと、追突の際の衝撃などで、頚部が振られたことにより、頚部・肩甲部・上肢等に痛みや痺れをもたらすもので、頚部捻挫、頚部挫傷、外傷性頚部症候群などと診断名が付されたものを指します。むち打ち損傷の場合、骨折などと異なり、画像所見や検査結果から客観的に症状の発生を裏付けられない場合が少なくありません。したがって、自賠責保険の認定制度では、以下のような様々な判断要素を検討し、後遺障害等級14級9号の認定が行われているようです。ちなみに、12級13号の認定がなされる場合もまれにありますが、画像上の所見が重篤であるなど、かなりハードルが高いものになりますので、まずは14級9号を狙うことをおすすめします。
① 通院実績
自賠責では、整形外科への通院の頻度が高い場合、症状が重篤であると判断される傾向にあります。たしかに、数値で症状の重さをはかる方法としては、最もわかりやすいものですし、重視されやすい実態があるのだと思われます。
その中でも最も特徴的なのは、整形外科への通院を重視する、という部分です。
接骨院のほうが通いやすい、実際によく診てくれる、という声は非常によく聞きます。
ですが、自賠責の判断の中で、整形外科をメインにして通院していることが重視されている、という実情がありますので、注意が必要です。実際に、後遺障害診断書を作成することができるのも医師のみですので、整形外科をメインにして通院していただくのが望ましいと思われます。
また、もう一つの傾向として、様々な事情が重なって1年近く経ってから症状固定した場合には、医師が長期の治療期間を要すると判断したことに鑑みて、整形外科重視の傾向が薄まり、接骨院に高頻度で通院している場合であっても後遺障害等級が認定される場合があります。
したがって、症状が残存する場合、適切な等級を獲得する方法は一つではありませんし、まずはご相談いただければと思います。
② 症状の一貫性
自賠責では、事故時から症状固定時まで、医師に訴える症状が一貫しており、自覚症状に一貫性があることを重視する傾向にあります。
途中で治療の中断がある場合や、自覚症状が変遷している場合などは、症状の一貫性がないとして、後遺障害が否定される場合があります。
その場合でも、通院しなかった正当な理由があることや、通院せずにギプス固定していたこと、処方薬が長期間与えられていたことなどを補足することで、後遺障害等級が認められることはあります。
また、自覚症状が変遷している場合もかなり厳しくなる傾向があります。また、神経症状として認定しづらい「違和感」「張り」などの症状しかない場合も、自賠責はかなり厳しく振り落とす傾向があります。このように、医師に対する自覚症状の伝え方、伝わり方も、実は自賠責の審査では重視されているようです。
③ 画像所見の有無
むち打ち損傷の場合、頚腰椎のMRI画像で、何らかの異常所見が認められる場合には、認定されやすくなる傾向にあります。
この画像所見は、痛みを裏付けることにつながれば十分ですので、外傷性であるか、年とともに変形したことによるかは問いません。事故の衝撃がきっかけで、痛みが生じやすい状態であった、ということが裏付けられれば問題ありません。
したがって、医師に「画像所見がない」と診断された場合でも、外傷性でなく経年性変性の所見が実は隠れている、という場合もありますし、CTのみしか撮影しておらず、MRI画像を撮影していない場合もありますので、あきらめずにご相談することをおすすめします!
④ 神経学的所見の有無
むち打ち損傷の場合、客観的に痛みの立証をすることは非常に困難ですが、痛みがあることと整合するようなテスト結果が出たという事実も、一つの判断要素として有益です。
以下の検査結果と、症状の整合性があることが要求されます。
・徒手筋力テスト
・ジャクソンスパーリングテスト
・腱反射テスト
・知覚テスト(しびれなど)
⑤ 事故態様
むち打ち損傷の場合、症状の重篤さを判断する一つの材料として、事故態様が軽微でないことを考慮しています。
したがって、事故時の車両の損傷が甚大であることを示す写真や、車両損害の金額、警察の実況見分調書などを用いて、事故が重大なものであったことを補足すると有益とされています。
⑥ 固定後通院
むち打ち損傷の場合、傍から見ると症状が見えないものですが、症状固定後、加害者側任意保険会社が治療費の支払いを止めているにも関わらず、被害者の方が自費で通院を継続している場合、症状の重篤さを確認する資料になると考えているようです。
したがって、整形外科や接骨院の自費通院を示す領収書などがあるのであれば、捨てずに保管していただくことをおすすめします。
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